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日本の低出生体重児、'75年以降増加の一途
〜背景に妊娠適齢期女性の喫煙・痩せ

1月16日、KKRホテル(東京都千代田区)で「第1回アジアネットワークシンポジウム〜生活習慣病予防を視野に入れた母子栄養について」が開催された。 この中で、インドネシアなどアジア諸国の低栄養状態の妊娠適齢期女性による低出生体重児の出生率などの現況が報告された。また、国際・産学共同研究センター研究員の瀧本秀美氏により、日本の低出生体重児の状況が報告された。

低出生体重児の出現率、この30年で男児・女児ともほぼ倍に

'80年代に入って、日本で少子化が一段と進んでいる。加えて、深刻化しているのが、低出生体重児の出現率(出生時体重2.5kg未満)の増加だ。
背景要因として、瀧本氏は、妊娠適齢期女性の「喫煙」と「低栄養による痩せ」が示唆されるとした。「人口動態統計によると、低出生体重児の出現率は1975年以降、増加傾向にある。1975年に男児4.7%、女児5.5%だったものが、2000年にはそれぞれ7.8%、9.5%へと増加している」(同氏)という。

この調査結果に関して、瀧本氏らは、厚生労働省が10年ごとに実施している乳幼児身体発育調査の、1980年,1990年,2000年の3時点の結果をもとに、低出生体重児の出産リスクの解析を行ったという。

調査対象者は、国勢調査対象の3000地区内の生後14日以上2歳未満の乳幼児及びこの地区から抽出された地区(1980・1990年は750地区、2000年は900地区)の2歳以上就学前の幼児。このうち、1980年,1990年,2000年の3時点において、出生時の体重、身長の情報を持つ生後0〜6歳の乳幼児計41,688人の結果を解析に用いた。

妊娠適齢期女性の喫煙率、一貫して上昇傾向に

妊娠中の母体の喫煙や受動喫煙は、胎児の発育のリスクファクター(危険因子)となることが世界的にも明らかになっている。妊娠可能年齢女性の喫煙が懸念されているが、「国民栄養調査でみると、調査年次でバラツキがあるものの、一貫して20-30歳代女性の喫煙率が上昇傾向にある」(同氏)。

さらに、もう一つの低出生体重児出現のリスクファクターとして、瀧本氏が挙げるのが、母体の妊娠前の栄養不良状態による「痩せ」。「国民栄養調査の20代女性の平均エネルギー摂取の1995年から2002年までをみると、エネルギー摂取量が減っていることがわかる。若い女性がだんだん痩せてきているということを裏付けている。妊娠したときにすでに痩せているということは、低出生体重児のリスクが増える」(同)という。

妊娠前の栄養不良は低出生体重児の危険性が高まることはこれまでの研究で示唆されている。そのため、「今後「痩せ」の妊婦に対する栄養指導が重要」と瀧本氏は指摘する。

低出生体重児、成人期に生活習慣病の罹患率高まる

なぜ、こうした低出生体重児の出現が問題なのか---。
低体重出生児は死亡リスクが高いばかりでなく、成人期における冠動脈疾患、高血圧、糖尿病といった生活習慣病に罹患しやすいという研究報告が増えているためだ。バーカー説(*注1)によると、胎内及び早期乳児期の低栄養は、身体の組成や生理機能、代謝に生涯にわたって影響を及ぼすことが示唆されているという。
そのため、乳幼児期ばかりでなく、妊娠前の女性の栄養摂取が乳幼児の成人期における生活習慣病のリスク軽減の重要なカギになるという。


*注1)バーカー説:母子の健康状態や栄養状況が現代と比べて劣っていた1920〜30年代に生まれたヨーロッパ人を追跡調査した研究。

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