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カニ殻由来のキチンナノファイバー、スキンケアや育毛で期待
〜カニ殻キチン質のナノ極細繊維、新市場開拓へ

4月に開催された「CPhI japan 国際医薬品開発展」。同展示会で新薬開発の医薬品原料などが展示されたが、この中で、カニ殻由来のキチン質を極細繊維に粉砕した「キチンナノファーバー」が紹介された。その効果から、スキンケアや育毛用途での市場形成が期待されている。

水に溶けにくいキチンをナノファイバー化

2018年4月18日〜20日、東京ビッグサイトで、「CPhI japan 国際医薬品開発展」が開催。同展示会は、世界8カ国で開催されている製薬業界の国際イベントで、新薬開発のための原薬・中間体、添加剤、医薬品原料などのサプライヤーやバイヤーが一堂に介した。

セミナーでは、伊福 伸介氏(鳥取大学工学研究科 教授)が、カニ殻由来の新素材「キチンナノファイバー」の機能と実用化に向けた取り組みについて講演。

この中で、水に溶けにくいキチンを髪の毛の10分の1にまでナノ化したことにより、従来の健康用途以外にも化粧品や育毛といったスキンケア用途での新たなる市場の創生が期待されるとした。

カニ殻キチン質の健康用途では、日本でキチン・キトサン製品として市場形成がなされて30余年が経過する。

今では、キトサンという呼称で商品が広く流通しているが、どのようなきっかけからカニ殻由来のキチン・キトサン製品は誕生したのか。

もともとカニは加工の際、その70%が廃棄となる。カニの漁獲量で日本一を誇る鳥取県境港ではその処理に頭を悩ませていた。

そのカニ殻の処理の相談を富士バイオ鰍ェ受けた。カニ殻の廃棄場というと不衛生で、悪臭の漂う風景が想像される。

しかし、実際に現場に足を運んでみると、なぜか野積みにされたカニ殻の周囲の作物が豊かに育っていた。そこから、同社のカニ殻キチン質の機能性についての探求が始まった。

そして、1986年に世界で初めて富士バイオが、カニ殻由来のキチン・キトサン製品を発売。

その後、キトサン製品を上市する参入企業が相次ぎ、1991年には、キチン・キトサン協会が発足するなど、国内外の研究者らによるキチン・キトサン研究が活発化し、免疫調整やコレステロール低下、血圧、創傷治癒、腸内環境への好影響などが次々と明らかになっていった。

キトサンは主にカニ殻から取り出される。カニ殻は、キチン、蛋白質、炭酸カルシウムから成る。そこでまず塩酸でカルシウムを除去、次いで苛性ソーダで蛋白質を除去するとキチンが残る。

そのキチンをさらに45%の苛性ソーダ溶液の濃アルカリで100度〜120度に加熱し脱アセチル化するとキトサンが得られる。

キチンの粉末そのものは水に溶けにくく、用途も限られる。そのため、稲福氏らの研究チームは、キチンの粉末を10ナノ(髪の毛の2万分の1程度)の極細繊維に粉砕。こうした「キチンナノファイバー」により、水に溶けやすい、カニ殻由来の新素材が誕生した。

キチンファイバーの利用としては、食品や化粧品への添加、フィルムなどの補強繊維、農業資源への利用、医薬品への展開などが期待される。

キチンファイバーの健康用途では、腸内の有用菌を増やし腸内環境を整える役割から、免疫調整によるさまざまな疾患の予防など、現代人の健康作りに欠かせないものとなる。

注目されているスキンケア用途だが、キチンナノファイバーを用いた化粧品で肌の水分量やコラーゲンの増加も確認されているという。

また、火傷した動物の皮膚の創傷治癒についても、鳥取砂丘で傷を負ったラクダにキチンナノファイバーを含んだ軟膏を塗布したところ、傷の治りが早くなることが複数の試験で明らかになったという。

他にも、アトピー性皮膚炎の緩和や育毛効果なども報告されており、育毛効果については、医薬品の「ミノキシジル」と同等かそれ以上の効果も見られ、今後の展開に期待が高まっているという。

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