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肉食は是か非か〜肉食擁護論も中国「鶏肉」リスク浮上
はたして「肉食」イコール健康か、限りなくリスキーな「食」に

『アエラ』と『週刊文春』が肉食を巡る特集記事を掲載している。かたや「肉食で日本人は長寿になった」と擁護論を展開、かたや「中国産の鶏肉が危ない」と抗生物質漬けの鶏肉の闇を暴く。狂牛病、口蹄疫、O157、そして新型鳥インフルエンザ勃発と、はたして「肉食」イコール健康か、と疑いたくなるほどリスキーな「食」になりつつある。

肉食否定、発売約3カ月で19万部

『アエラ』(4.29号)では、「肉は食べるな」大間違い、と銘打ち、慶應大学放射線科の近藤誠氏や人間総合科学保健医療学部長の柴田博氏が肉食が日本人の長寿をもたらしたと肉食有益論を展開している。

この肉食論争のきっかけとなったのが、『長生きしたけりゃ肉は食べるな』(幻冬舎:若杉友子著)の「現代人は身体に良くないものを食べているから病気になる。お肉はその代表選手」という一節である。同書は発売約3カ月で19万部も売れたというから、業界も看過できない。

若杉氏は現在76歳、京都の古民家に住み、自給自足の生活を送っている。食事は米を中心とした一汁一菜で、肉だけでなく、卵や牛乳などの動物性食品も一切摂らないという。 まさに、戦前の食事を彷彿とさせるが、これに対し、柴田氏は、日本人が長寿世界一になったのは肉や牛乳などの摂取量が急増したのと軌を一にする、「粗食長寿説」は有害な思想と切って捨てる。

戦後1947年に、日本人の平均寿命が男女とも50歳に

日本人の平均寿命をざっと俯瞰すると、1900年(明治33年)では、男女ともに平均寿命が40代前半。この頃、欧米人の平均寿命は50歳を超えている。1920年(大正9年)では、日本は世界で50番以下。1947年(昭和22年)に、ようやく日本人の平均寿命が男女とも50歳になる。欧米に遅れること50年。

1985年(昭和58年)に日本は世界でトップの長寿国になる。この頃、日本人の動物性たんぱく質と脂質の摂取比率が理想的な状態になり、長寿がもたらされたとされている。以降、日本は長寿で世界のトップを独走する。

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この流れをみると、確かに肉や乳製品による動物性たんぱく質で、脳卒中のような血管系の疾患が減り、長寿がもたらされたといえるかも知れない(むろん背景には医療技術の進歩や衛生管理の徹底などもある)。しかし一方で、ガンや糖尿病が増加しているのも事実である。ガン人口の増加は、統計学的には、高齢者が増加したためといわれているが、そうした理由だけでは釈然としない。それならば、脳血管疾患者ももっと増えてしかるべきだが、減る一方である。

肉には必須アミノ酸など健康に有益な栄養成分が多く含まれる。しかし、近年、行き過ぎた経済優先主義から、抗生物質のような健康に不利益なものが多用され、もはや人の生体を養う「食」とはかけ離れたものへと変貌している。

『週刊文春』(5.2・9号)では、「マクドナルドの中国産鶏肉が危ない」と銘打ち、中国共産党系機関紙「北京青年報」が「河南大用食品グループが病気で死んだ鶏を長期に渡り加工販売し有名ファーストフード店で売っていたとの情報がネットに流れた」と報じている。

有名ファースト店とは、マクドナルドとケンタッキーフライドチキンだが、日本マクドナルドでは「一部に河南大用食品グループの鶏肉を扱っている」ことを認めている(日本マクドナルドから食の安全・監視市民委員会への回答書)。

同誌では、「中国では出荷直前まで抗生物質を使う」(中国の畜産指導員)と、中国での抗生物質の乱用の実体を紹介しているが、加えて鶏の餌に含まれるDDTやBHCなどの有機塩素系農薬の有害性についても触れている。有機塩素は肝機能障害の発症に係るが、中国産鶏肉がこうした危険な化学物質に汚染されていたとしても、日本の検疫では検査しないという。

折しも、鳥インフルエンザによるパンデミックが懸念されている時である。はたして、肉食は限りなくリスキーな「食」となり果てたのか。

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