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大豆イソフラボン、女性で摂取量が多いと肝がんリスクが高くなる
野菜・果物は摂取量が多いほど肝がんリスク低下

厚生労働省研究班が野菜・果物及びそれらに含まれる抗酸化物質、また大豆イソフラボンと肝がんと関連についての研究成果を報告している。大豆イソフラボンについては、日本人は日頃から大豆食品を摂っているため、さらなる摂取は過剰が懸念されているが、今回の研究では、女性は肝がんリスクを高める可能性があり、とくに肝炎ウイルスに感染している女性は摂取を控えた方がよいという結果が出ている。

40〜69歳の男女約2万人、12年間追跡調査

厚労省の「平成20年人口動態統計」によると、平成20年の死亡数は114万3000人(推計)で、平成19年と比べ、3万5000人増。死因のトップは、がん(悪性新生物)で34万3000人、2位が心疾患で18万4000人、3位が脳血管疾患で12万6000人と推計されている。
がん罹患については、男性は肺がん、女性は胃がんがトップ。肝臓がんについては、それぞれ第3、4位あたりについている。

今回、厚労省研究班は野菜・果物及びそれらに含まれる抗酸化物質、また大豆イソフラボンとの肝がんリスクの関連について報告している。研究では、茨城、新潟、高知、長崎、沖縄、大阪に居住の40〜69歳の男女約2万人を対象に、1993年-2005年の12年間追跡した(期間中、男性69人、女性32人が肝がんを発症)。

野菜、緑黄色野菜、緑の葉野菜の種類別に、摂取量で多・中・小の3グループに分けたところ、摂取量が多いグループは少ないグループに比べ、肝がんリスクが約40%低いことが分かった。ただ、果物については、摂取量が多いグループで肝がんリスクが高まる傾向が見られたという。

また、野菜・果物に含まれる抗酸化物質(レチノール・α-カロテン・β-カロテン・ビタミンC)については、αおよびβ−カロテンの摂取量が多いグループは肝がんリスクが減少傾向にあったが、Cについては、摂取量が中・多のグループは小グループに比べ、肝がんリスクが高い傾向にあったという。これについて、Cは肝がんのリスク要因となる鉄の吸収を高めるためと研究者らは見ている。

症例数が少ないため、今後の研究での確認が必要

研究者らは、今回の調査結果から、肝炎ウイルスの感染者は、αおよびβ−カロテンを含む野菜の摂食に努め、ビタミンCの摂取を控えた方がよいとの可能性が示されたとしている。ただ、症例数が少ないため、今後の研究での確認が必要と言及している。

肝がん以外にも、野菜のがん予防効果については、これまでに報告されている。
Quebec University研究者グループが、34種類の野菜からの抽出物が、胃、肺、乳房、腎臓、皮膚、すい臓のがん細胞株に対する影響を観察したところ、ブロッコリ、ケール、芽キャベツなどアブラナ科野菜の抽出物であるスルフォルファンやガーリックの硫黄化合物ががん細胞増殖を抑えることが分かった。また、ポテト、ニンジン、トマト、レタスには抗がん作用は見られなかったという(Food Chemistry誌08/10月号)。

カロテンやビタミンCについては高齢者の骨粗しょう症対策に有用であることが報じられている。
Tufts UniversityおよびBoston University研究者グループが、Framingham Osteoporosis Studyに参加した75歳以上の男性213人、女性390人を対象に調べた。被験者のカロテン(α-カロテン、β-カロテン、リコペン、ルテイン、ゼアキサンチン)摂取を126品目食品頻度調査から計測、さらに被験者の腰、背骨のBMD(骨密度)を調べた。 結果、4年間で、特にリコペンが女性の腰部脊椎の骨損失改善、また男性の腰骨とも関連があることが分かったという(American Journal of Clinical Nutrition誌09/1月号)。

また、Tufts University研究者グループが、Framingham Osteoporosis Studyに参加した男性334人、女性540人(平均年齢75歳)のデータから126品目に関する食品頻度調査を分析(1988〜1989年)。男性213人、女性393人の臀部、背骨、腕における骨の損失を測定した。結果、臀部の骨の上半分で、ビタミンCの総摂取量が多いほど骨ミネラル密度(BMD)の損失が低下していることが分かったという(Journal of Nutrition誌08/10月号)。

大豆イソフラボン、女性で摂取量が多いと肝がんリスクが高くなる

大豆イソフラボンについては、日本人は味噌や豆腐などの大豆製品を常食していることもあり、サプリメントでの過剰摂取が懸念されている。大豆イソフラボンはゲニステインとダイゼインが主要成分で、@エストロゲン並びに反エストロゲンAがん誘発酵素抑制B抗酸化C免疫への作用――といった特性がある。

厚労省研究班が前述の調査で大豆イソフラボンと肝がん発症リスクとの関連を調べたところ、男性では、肝がんリスクに関連はみられなかったが、女性で、大豆イソフラボンを多く摂ったグループでは、ゲニステインで約3倍、ダイゼインで約4倍の肝がんリスクが示されたという。

肝炎ウイルスに感染している女性、イソフラボン摂取を控えた方がよい

もともと女性は男性と比べ、肝がんの発症率が少ないが、女性ホルモンのエストロゲンが肝がん予防の役割を果たしているためとみられ、動物実験や疫学研究でもそれが報告されているという。

イソフラボンは構造がエストロゲンに似ており、エストロゲンレベルが高い女性はエストロゲンを妨げる作用をする。そのため、女性でイソフラボンを多く摂ると、肝がんに予防的なエストロゲン作用が妨げられ、リスクが高くなる可能性が考えられるという。研究者らは、とくに肝炎ウイルスに感染している女性は、イソフラボン摂取を控えた方がよい可能性が示されたとしている。ただ、前述の研究と同様、症例数が少ないこともあり、今後の研究での確認が必要と言及している。

大豆イソフラボンについては、ゲニスティンが乳がんのリスク低下に役立つことも報告されている(Journal of Clinical Oncology誌08/4月号)。Motoki Iwasaki of the National Cancer Center研究者グループが、40〜69歳の日本人女性24,226人から血液サンプルを採取。食習慣調査の回答を集めた(期間中、144人が乳がんと診断)。研究者らは、研究開始時にゲニスティン濃度を基に被験者をグループに分け、乳がんのリスクを分析したところ、濃度の最も高いグループの4分の1は最も低いグループに比べ、乳がんリスクが65%低いことが分かったという。


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