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【 米国栄養補助食品業界、信頼回復の基盤作り進む 】

この5年のうちに110億ドル以上の巨大市場に成長したニュートリション産業。当時の勢いは衰えたとはいえ、ベビーブーマーが中高年世代に突入して、今後も同産業の成長は止まることはないと見られている。消費者の69%は、ビタミン、ミネラルなどのサプリメントの補給が健康維持に不可欠と考え、53%がこれら関連製品を利用している。ますます、予防医学の考えは受け入れられ、自分の力で健康を守ろうとする意識が高まるだろう。

骨粗しょう症や心疾患など、CRNがビタミン・サプリメントの有効性を発表

米国における栄養補助食品の製造・販売業社が加盟し、ワシントンDCを中心に活動するCouncil for Responsible Nutrition(CRN)は最近、サプリメントの有効性をまとめた報告を発表した。

The Benefits of Nutritional Supplementsと題されたこのレポートによると、総合ビタミン剤および単独の栄養素サプリメントを継続的に使用すれば、免疫システムの強化から出産障害防止までの幅広い分野でかなりの効用が期待できるという。

レポートに記載されたその有効性の概要は次の通り:

(1)妊娠可能性のある女性は全て、葉酸配合の総合ビタミン剤を利用することによって、胎児などに起る障害が70%防げる。

(2)高齢者がミネラル配合の総合ビタミン剤を飲むことによって、感染性疾患が減少し病気の総日数が半分に縮小できる。

(3)カルシウムとビタミンDサプリメントを利用することによって、高齢者の腰骨骨折が20%減少、これは年間4万〜5万件少なくなり医療費が15億〜20億ドルの節約となる。

(4)1997年の推測だと、予防措置によって心血管系疾患、腰骨骨折の発症が5年遅らせることができれば、米国の医療費は年間890億ドル浮く計算になるという。

また、中高年に関連するトピックとしては…;

(1)3種類のビタミンB群、ビタミンB6、B12、葉酸を多く摂取すると、中年層の心臓病、卒中による死亡や身体障害の危険性が下がる。ある研究によると、心臓病による死亡数は年間数万件防げるという。

(2)抗酸化剤(ビタミンC、Eなど)が心臓病を予防するという研究報告は増大している。例えば、8万7千人以上が参加したNurses’Health Studyでは、ビタミンEを2年間以上摂取したグループの心臓病の危険性は41%低下を示したことが分かっている。

(3)中年層女性の関心事の一つ、骨粗しょう症について、50歳以上で閉経期後の女性20万人を調べた2001年の研究では、40%が骨減少症を示し7%が骨粗しょう症を表している。骨減少症の女性は平均的な骨密度を持っている女性に比べ、骨折の割合が2倍、骨粗しょう症の場合は4倍となっている。

(4)65歳以上の層の失明要因になっているのが加齢による白内障や黄斑変性(AMD)で、それに大きな影響を与えるのが抗酸化剤。また、抗酸化剤は老化による認識力低下改善にも有効性を示す。
(5)アメリカ人の食生活に不足しがちな栄養素はカルシウム、ビタミンD、A、Eだが、特に高齢者の間では欠乏状態にある。ある研究では、被験者の80%が4つ以上の栄養素で不足を示していた。

先進国ではビタミン欠乏は目立たなくなってきているが、それでもアルコール依存症患者、厳しい戒律の菜食主義者、薬剤治療を受けている患者など特定の層で、栄養素不足が見られる。ハーバード大学研究者らは9種のビタミンについて、その生理学的影響、供給源、欠乏症候群などをまとめている。

概要は以下の通り;

(1)高齢者、菜食主義者、アルコール中毒患者、吸収不全患者は数種のビタミン不足の危険性が高くなる。
(2)妊娠初期のビタミンA過剰摂取、またその他の脂溶性ビタミン摂取の過剰は副作用を引き起こす。
(3)葉酸不足は、出産障害や発がんを導く。
(4)葉酸、ビタミンB6、B12はホモシステイン代謝に必要で、冠状動脈心臓病の発症に関連する。
(5)ビタミンEとリコペンは、前立腺がん予防に有効性がある。
(6)ビタミンDはカルシウムと併用すると、骨折の発生を抑制する。

一方で、ビタミンの過剰摂取の問題も

ビタミンの摂取不足がいわれる一方で、最近ではビタミンの摂りすぎも問題になっている。カナダの研究グループは、政府機関が設定する栄養素摂取の上限(UL)を知らない人が多いという調査報告を最近発表している。

19歳から65歳の1千530人を対象に調べたところ、サプリメントを利用している被験者の半数近く(47%)はビタミンB群、ナイアシンの上限を知らずそれ以上に摂取していることが分かった。また特にビタミンA、B6の過剰摂取が多かったという。例えばナイアシンの場合、成人のULは35mgだが、50mgの過剰摂取による副作用が75人のうち5%にあり、100mg摂取では6人のうち50%に副作用が出ていたという。

健康強調表示の信頼度をランク付け

ニュートリション産業の中で最も熱い市場が“ファンクショナルフード”と呼ばれる分野。食品が本来持つ栄養素以上の健康価値、付加価値をつけ機能性を持たせた食品群をこう称するが、政府が公認しているものではない。元々食品の場合は検査や厳しい基準をパスする必要が無いからだ。

では、消費者はどこで各食品の質を推し量ればいいのだろうか。米国の消費者が見て分かりやすいのが食品ラベルの“health claim”部分。Health claim表示はFDAの許可が必要であるため、これが記載されている食品は信頼性が高くなる。American Council on Science and Healthはこのほど、科学的裏づけの確かさを基にこのhealth claimのランク付けを行った。

例えば――;

○信頼性が非常に強いもの:
未精白オーツ製品(コレステロール、心臓病の危険性低下)、アメリカオオバコ配合食品(コレステロール値、心臓病の危険性低下)、大豆プロテインを原料にした食品(コレステロール値、心臓病の危険性低下)、植物性スタノール、またはステロールエステル素材のマーガリン(コレステロール値、心臓病の危険性低下)など。

○信頼性が強いもの:
オメガ3脂肪酸配合の魚(心臓病の危険性低下)

○普通のもの:
クランベリージュース(尿道感染の危険性低下)、ガーリックの硫化成分(コレステロール値低下)

○弱いから普通もの:
緑茶(がんの危険性低下)、トマトやトマト製品のリコペン成分(ある種、特に前立腺がんの危険性低下)

○弱いもの:
ルテインを含む緑葉野菜(黄斑変性の危険性低下)、共役リノール酸を含む乳製品(多くの健康問題に)、十字架花野菜(がんの危険性低下)など。

ニュートラスーティカル市場の伸びが期待

“ファンクショナルフード”と類似したコンセプトで、栄養素を疾患予防に役立て医薬品として認識する“ニュートラスーティカル”市場の急激な拡大が世界に広がっている。世界市場は2006年までに86億ドルが見込まれ、年間6%の成長を予測している。

予測によると、ハーブ/ノンハーバルエキスが期待大で、ギンコビロバ、グルコサミン、ノコギリパルメットがその代表。大豆イソフラボン、多価不飽和脂肪酸(PUFAs)、リコペン、アメリカオオバコも強化食品や飲料、ダイエタリーサプリメントとして採用され健闘が期待されている。
また最も急成長が見込まれるのが中国市場。さらに、2006年までにアジア/太平洋諸国、中南米、東ヨーロッパ、アフリカ/中近東の伸びが期待されている。

ダイエット素材のエフェドラに対応の遅れ

巨大市場に成長したニュートリション産業に対し安全性確認や規制の遅れが目立っている。最近その扱いに議論が起っているエフェドラ製品への米国の対応が遅れている。

体重減少を謳うダイエット製品やスポーツサプリメントに配合されるエフェドラは、その利用で100人以上の死亡事故がFDAに報告され、政府による規制措置が求められていた。消費者擁護団体、Public Citizenは去年、エフェドラ配合製品の販売禁止を要請する嘆願書を提出、その回答を待っていたが、Dept. of Health and Human Serviceは、エフェドラの有効性、有害性が確認されるまで同製品に対する措置は延期するとの声明を6月発表した。FDAの諮問委員会はエフェドラ製品の安全性を検討したが、さらに研究が必要との結論に達している。

ハーブのkava、ドイツやフランスでも販売停止措置

また、肝臓障害を起こすとして問題になっているハーブのkava kava製品について、ドイツ当局は販売許可を取り消した。微量しか使用しないホメオパシー医療での利用は例外としている。ドイツでは、40件の副作用報告が寄せられている。

一方、米食品医薬品局(FDA)は、45歳の健康体女性がkava kava製品利用で肝臓障害を起こし移植の必要が訴えられたことから、調査を開始している。カナダでは、安全性が確認されるまでその使用を控えるよう消費者に警告、スイスやフランス、英国では販売の停止措置をとっている。

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