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【 米国における代替医療の現状を総括A〜期待される栄養成分 】

いつまでも健康で若くいたいと願うベビーブーマーたちの高齢化が進み、健康への関心にますます拍車がかかる米国。医療費の高騰も追い風となり、正しい食生活と運動、そしてビタミンやマッサージで病気を予防しようと代替医療の利用者が増えている。そうした国民のニーズに応え、クリントン大統領は「食生活ガイドライン2000」を発表、また、米国立衛生研究所(NIH)の代替医療研究センターの新ディレクターも今年初め、将来の代替医療へのビジョンを明確に示した。21世紀は予防医学を推進すべきとしているが、その要となる栄養成分についての役割を明確にした。

新ガイドライン、「毎日、穀物の摂取」や「砂糖の摂取制限」など10項目

「食生活ガイドライン」がスタートしたのは1980年。法律で医学および科学の研究報告に基づき5年に1度の改定が義務付けられている。改定は、栄養また医療の分野で著名な専門家11人から成る「食生活ガイドライン諮問委員会」が行なう。ちなみに2000年ガイドラインは、コーネル大学のカットベルト・ガルザ氏が委員長を務めた。

「2000年ガイドライン」は、項目を前回の7から10に増やした。具体的には、フィットネスの項目で(1)健康な体重維持(2)毎日の運動、健康な体作りの項目で(3)食べ物を選ぶ際のフードピラミッド利用(4)毎日、穀物の摂取(5)毎日、野菜、くだもの摂取(6)安全な食品の保存、気を使った選択の項目で(7)飽和脂肪、コレステロールの摂取制限(8)砂糖の摂取制限(9)塩分控え目な食品選択(10)アルコール摂取の制限となっている。

保険福祉省のダーナ・シャララ長官は「健康的な食生活の大切さはだれもがよく心得ている。新ガイドラインでは、運動そして安全な食品の取り扱いの重要性にも焦点を当て、健康な食生活を総括的に示している」と話している。

付記:
クリントン大統領は5月27日、米国民向けラジオ演説で「食生活ガイドライン2000」を発表した。その要約は次の通り。

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連邦政府は過去20年にわたり、科学的立証に基づき「食生活ガイドライン」を設定し、ここ6年でほとんどの食品に栄養価の表示を義務付けた。質のいい情報が豊富にあれば、正しい選択ができるからだ。脂肪の摂取は減り、くだもの、野菜、穀物をよく食べるようになり、コレステロール値も下がってきている。

しかし、国民の一部にこういった食生活の改善が見られる一方で、大半のアメリカ人はまだまだ健康な食生活を営んでいないのが現状だ。加えてライフスタイルの変化もさらに状況を悪くしている。忙しいとファーストフードを食べ、自動車、コンピューター、リモートコントロールと、生活が便利になったおかげで運動量は激減した。

その産物として肥満人口が増加。今や子供の10人に1人は肥満である。誤った食生活も肥満も、「四大死因」といわれる心臓疾患、脳卒中、がん、糖尿病を引き起こす、警告すべき社会現象といえるだろう。

こういった現状に挑戦しようと、全米から専門家がワシントンに集まり、来週から「栄養サミット」(農務省・保険福祉省主催)が始まる。全国規模の栄養に関するサミットが開かれるのは実に31年ぶりのことである。そこで開幕に先立って、連邦政府の「食生活ガイドライン2000」を発表する。

「ガイドライン」は5年に1度の割合で改定され、公立学校の給食をはじめ、各公共事業において貴重な情報源となっている。新ガイドラインの骨子は、「穀物、野菜、くだもを毎日、食べ、飽和脂肪、コレステロール、砂糖、塩、アルコールは控える」。

これまで医者や科学者が強調していたことだ。また、「安全な食品の扱い方と保存」と「運動の推進」も強調している。たとえば、歩行運動をわずか30分でも週に5回やれば、心臓疾患で死亡する危険が半分に減るという。

加えて、連邦政府は今年の夏、市販肉のパッケージに栄養価の表示の義務付けを提案する。消費者に、シリアルや冷凍食品と同じように、肉の栄養価を情報として提供するのは当たり前のことだ。現在、市販肉への栄養価表示はあくまで自発的なので、実施しているのは小売店の60%にすぎない。国民の生命にかかわる情報を正しく提供するのは政府の役目。そして、その情報を役に立てるのは国民の責任である。

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○NCCAM(米国相補・代替医療センター)新ディレクターのストラウス博士、将来の代替医療へのビジョンを語る

高騰を続ける国民医療費削減のためにNIH(米国立衛生研究所)をはじめとする政府機関が代替医療の有効性の検証に本格的な取り組みを開始したことを報告したが、NIHの中に設けられたNCCAM(米国相補・代替医療センター)が具体的にどのような方針の元に活動を行おうとしているのか新ディレクターとして就任したストラウス博士の連邦会議での演説を要約紹介する。

※代替医療:伝統医学、栄養療法、ハーブ(薬草)療法、漢方、鍼灸、精神療法、伝承医療など西洋医学以外の医療を指す。米国では「90年代に入って3人に1人が代替医療を利用している」(ハーバード大学・アイゼンバーグ博士調査)というほど、西洋医療離れと代替医療の普及が同時に起きており、米国政府も代替医療の有効性の検証に本腰を入れざるを得なくなっている。

・NCCAM(米国相補・代替医療センター)新ディレクターのストラウス博士就任まで

米国最大の国立医学研究機関である国立衛生研究所(NIH)にNCCAM(相補・代替医療センター:National Center For Complementary and Alternative Medicine)が開設されたのが1998年。本格的に代替医療の有効性を調査する機関として設立されたもので、昨年10月、ステファン・ストラウス博士をディレクターに迎えた。

同氏は、就任早々に精力的な活動を続けており、中でもハイライトは、マサチューセツ州ボストンで開いた代替医療に関するタウンミーティングと、連邦議会を前にNCCAMの2001年度予算要求をサポートした演説といえるだろう。また3月に行ったタウンミーティングでは、医療の専門家と消費者が一堂に会し、針、カイロプラクティクからマッサージまで広範囲にわたり代替医療について熱心な話し合いが行われた。

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□NCCAMの方向性を示した連邦議会でのストラウス博士の演説内容を要約する。

・かつて異端と呼ばれていた代替医療のいくつかは、すでに安全性と効果が立証

AIDS関連を除く予算として、前年度を338万1千ドル上回る7136万2千ドル、AIDS関連も含めると、前年度を338万1千ドル上回る7239万2千ドルを要求する。NCCAMの働きは消費者の代替医療への関心の高まりを反映するものであり、今後、代替医療が国民の健康向上に大きな役割を果たすものと固く信じている。1997年には、医療における消費者の約42%が代替医療を利用し、総額270億ドルを使った。中でもベビーブーマー世代の関心が非常に高まっている。

かつて異端と呼ばれていた代替医療のいくつかは、すでに安全性と効果が立証されており、西洋医学との併用も進んでいる。現在、疾患予防の主流は正しい食生活と運動。代替医療では、慢性の痛みや化学療法による吐き気には、鍼療法が頻繁に利用されている。

「なぜ効果があるのか」を科学的に立証し、西洋医学の中に取り入れていけば、代替医療は慢性病の予防および治癒に多大な可能性を秘めている。しかし、効果を裏付ける証拠が不足しているのが現状だ。

・西洋医学との一体化を目指す必要がある

ディレクターとしての私のチャレンジは、国民を正しく指導すること。代替医療の利用者は増えており、「効果を示したこの研究報告は本当に正しいものなのか」という疑問をよくうける。研究なしにすでに広く利用されている代替医療の安全性と効力をきちんと評価することは、NCCAMにとって重要な課題だ。それには、NIHのほかの機関とはちょっと違ったアプローチが必要だ。他の機関の研究はほとんど科学的発見に基づいてい
る。
しかし、NCCAMの場合、大勢の人が実際に使ってみてという臨床実験に焦点を当てるべきだ。それが最も有効だと思う。ウワサではなく、信用できる確かなデータを消費者に示さなくてはいけない。そして、西洋医学に携わる医療関係者も教育し、西洋医学との一体化を目指す必要がある。患者のベネフィットのためにだ。こういった現状を理解し、積極的な支援をおしまない連邦議会に深く感謝する。

多大な支援のもとに、NCCAMは、(1)研究への投資(2)研究員の養成(3)移民をはじめ特定集団への情報提供(4)西洋医学との一体化の促進(5)責任ある管理―の5項目を戦略として打ち出した。

厳格な科学的研究を積み重ね、効果を立証し、既存医療と併用を進める―それが私の代替医療の将来に対するビジョンである。現在使われている「Complementary and Alternative medicine」という用語は、いずれ「Integrative medicine」に取ってかわられるだろう。

神経生物学の進歩で鍼や瞑想、そして最近注目されている偽薬品効果といった古くから使われている療法はさらに解明されていくだろう。また、ハーブや栄養補助食品の効用を明らかにし、標準化し日常的に利用する。研究の末、危険また効果のないことが分かった代替医療は排除していく。代替医療の将来は明るい。

・イチョウ葉、グルコサミン、セントジョンズワート、ノコギリヤシ、マリアアザミ(ミルクシスル)などを徹底検証

次ぎに、NCCAMの継続中の研究をいくつか紹介しよう。National Institute on Aging(NIA)と共同で昨年、イチョウ葉の老人性痴呆症などへ
の効果について調査に乗り出した。イチョウ葉と偽薬を使い、クリニック4カ所で約3000人を対象に行う。同じくNIAと共同で、グルコサミンと硫酸コンドロイチンの骨関節症への効果、鍼療法の骨関節症による痛みの緩和効果と鬱症への治療効果も調べている。

また、セントジョーンズウォートの鬱病に対する効き目を調べるNIHの「Office of Dietary Supplements(ODS)」らとの共同研究は、ほぼ終了の段階だ。これまでにない大規模な研究で、HIV治療薬との併用で弊害があるなどの問題点が明らかになっている。

ほかには、National Institute on Diabetes and Digestive and Kidney Diseases(NIDDK)と共同で、前立腺の良性腫瘍に対するノコギリヤシ抽出液の効果を研究中だ。

・今年2つの「栄養補助食品研究センター」を新設、ハーブ(薬草)の安全性など調査

現在、NCCAMには11の研究センターがある。99年度には9センター、今年になってODSと共同で、2つの「栄養補助食品研究センター」を新設した。薬草の含有物質や安全性について調べる機関だ。現在、100件を超える研究に資金援助している。今年中には、15センターに増やしていきたい。

今後の課題だが、NIDDKとNational Institute of Allergy and Infectious Diseases(NIAID)と共同で、肝臓病の治療に関する研究を計画している。具体的には、マリアアザミ(ミルクシスル:Milk Thistle)抽出液のC型肝炎および他の肝炎への効果を調べる。

また、既存医療との併用を促進するにあたり、医学部のカリキュラムへの代替医療組み込みで資金援助を計画中だ。代替医療に拒否反応を示している医療関係者との壁を取り除くことも今後の大きな課題といえるだろう。

※ストラウス博士略歴
 
慢性疲労症候群、ライム病、エイズ、慢性のB型肝炎、ヘルペスなどに対する代替医療研究の第一人者。慢性疲労症候群にいたっては、病名がつく以前の1979年から研究を始める。分子生物学、病原論、ウイルス疾患の治療および予防の分野でも豊富な研究実績をもつ。
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○代替医療の関所、FDA(米食品医薬品局)の最新情報

代替療法の有効性に関する研究機関としてNCCAMが設立されたが、規制に関してはNCCAMではなく、FDA(米食品医薬品局)が担当している。FDAが消費者向けに発行している「FDA消費者マガジン」の最新号から栄養成分に関する興味深い研究報告を拾ってみた。

・サメもガンになる

サメにガンがないことから、ガン予防に効く栄養補助食品として大きな注目を集めた「サメの軟骨」。ところが、ジョンホプキンス大学とジョージワシントン大学の研究員が、4月5日に開かれた米国がん研究協会の集会で、「実はサメもガンに罹っていた」と発表、「サメ軟骨」の効き目に一石を投じた。しかし、研究員は「『サメ軟骨』のがん予防効果を否定しているわけではない」とコメントしているという。

・中年になっての豆腐の食べ過ぎは、高齢になって頭の回転を鈍らせる

ハワイの健康研究センターによると、40代半ばから60代半ばにかけて豆腐を食べ過ぎると、70代半ばから90代前半に脳の働きが悪くなる。同センターが1965年から日系人8000人を対象に調査したところ、男女ともに豆腐を週に2回以上食べている人は、高齢になった時に、食べない人に比べ知的機能障害の兆候が2倍も見られたという。豆腐の成分、isoflavonesが関係しているという。

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