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【 ハーブ代替療法、一大ブームに 】

そのうち供給が需要においつかなくなるのでは――そんな声が聞こえてくるほど、米国 でハーブ・サプリメントが一大ブームを巻き起こしている。米国では西洋医療に替わる医 療(代替医療)を求める動きが急速に高まっているが、そうした中で、ハーブ(薬草)によ る代替療法に関心が集まっている。ここ数年の売上げ状況をみると、1994年が16億ドル。 それが98年にはほぼ40億ドルに達している。スーパーやドラッグストアーといった量販店 では、ここ数年100%成長を記録し続けている。効能を裏付ける科学的な調査研究も増 え、消費者の支持は高まるばかりだ。そんな米国のハーブ最前線を報告する。 

97年から98年にかけ、急成長を遂げる

1970年代はじめには、わずか一握りの愛好家たちの間で売買が行われていたハーブ。 それが1997年から98年にかけ、ベイヤーといった大手医薬品会社が次々と参入し、ハ ーブ市場は急成長を遂げた。

一般消費者に広くハーブ情報を提供する「ハーブ・リサー チ・ファンデーション」の資料によると、推定される販売市場の内訳は、健康食料品店が 32%とトップで、次に「アムエイ」「ニュースキン」といったマルチ商法27%、量販店17%、 通信販売8%、医師免許の有無にかかわらず医療に携わる人による販売7%、その他 2%と続く。資料に数字はないが、最近、インターネットが新たな販売手段として着実に 伸びている。

健康食料品店では、数100種類にのぼるハーブが、「フレッシュ」、「乾燥」、「抽出」、 「植物薬(ファイト・メディシン)」といったいくつかの形で売られている。「ファイト・メディ シン」は、病気を引き起こすと考えられる体の酸化を防ぐ植物化学物質「ファイト・ケミカ ル」を複雑なプロセスを経て濃縮したもので、最も手間のかかる分、効果も高く、当然、 値段も高い。

量販店での売れ筋トップはイチョウ葉

ところで、数百種類もあるハーブの中で、いったい売れ筋は、そして、人気上昇中のも のはどのようなハーブか。

企業にあらゆる情報を提供している「インターナショナル・リサーチ・インスティテュート (IRI)」の1998年7月12日付け統計によると、量販店における売上げ上位のハーブ・サ プリメントは次の通り。(売上げ金および伸び率は1998年7月12日まで52週間のもの)

1.イチョウ葉   1億3千800万ドル  140%+
2.セント・ジョンズ・ワート 1億2千100万ドル 2801%+
3.ジンセン      9千800万ドル   26%+
4.ガーリック     8千400万ドル   27%+
5.エキナセア     3千300万ドル  151%+
6.ノコギリヤシ    2千700万ドル  138%+
7.ブドウ種子抽出物  1千100万ドル   38%+
8.カバカバ        800万ドル  473%+
9.マツヨイグサ      800万ドル  104%+
10.Echinacea/Goldenseal 800万ドル   80%+
11.クランベリー     800万ドル   75%+
12.カノコソウ      800万ドル   35%+
13.その他      3千100万ドル
合計        6億6千300万ドル

量販店での伸び率トップはセント・ジョンズ・ワート

また販売率が急速に伸びているハーブは以下の通り。 (データ: IRI 1998年7月12日)

1.セント・ジョンズ・ワート    2801%+
2.緑茶        1007%+
3.Black cohosh     511%+
4.ニワトコ       497%+
5.カバカバ       473%+
6.大豆         163%+
7.エキナセア      151%+
8.イチョウ葉      140%+
9.ノコギリヤシ     138%+

以上が量販店における販売状況だが、健康食品店でみると多少順序が入れ替わって くる。

健康食品店での売上げトップはエキナセア

健康食品店の売上げ上位は以下の通り。
(データ: ホールフードマガジン)

98年(97年)
  1(1)    エキナセア
2(17)   セント・ジョンズ・ワート
3(3)    イチョウ葉
4(2)    ガーリック
5(5)    ノコギリヤシ
6(6)    アジア・ジンセン
7(4)    Goldenseal
8(11)   アロエ
9(18)   シベリアン・ジンセン
10(18)  カノコソウ 

セント・ジョンズ・ワートの台頭など、ハーブ産業の急伸は広告効果によるところが大きい

ここ2、3年に始まった一大ブーム、特に量販店での急成長は広告の効果によるところ が大きい。ハーブが健康食品業界で頭角をあらわしてくると、大手企業が次々と参入 し、莫大な広告料を投じた。たとえば、1998年の各社ハーブ広告出費は推定で、ベ イヤー社は3千500万ドル、サンソース社は4千300万ドル、ファーマトン社は2千600万 ドル。ファーマトン社はうち1千500万ドルをすべて鬱病に効く「セント・ジョンズ・ワート」 につぎ込んでいる。

こうして、これまで静かな人気を保ち続けたハーブ市場が一気に 塗り替えられた。ナチュラル志向、健康志向の強いどちらかといえば特殊層相手だった のが、マスメディアを通じて広く一般消費者にも浸透していった。

8割の消費者が「ハーブは安全だと思う」と回答

市場が広がったことで、効能や安全性を調べる科学的な研究も増えていく。消費者は 情報を求め、産業界はそれにこたえたため支持者が一気に増えたのはいうまでもない。 プリベンションマガジンとNBCニュースが1997年に共同で行った調査によると、65% が「ハーブは安全だと思う」と回答しており、98年の別の調査ではさらに79%にアップ している。

またハーバル・リサーチ・ファンデーションの資料によると、91年から93年の年間平均 死亡件数は、ビタミン1件、ハーブ1件。ちなみに医薬品は10万件。安全で、さらに薬に 勝るとも劣らない効果ありとなれば、スポットライトを浴びるのは当然といえる。コロンビア 大学は1998年に内科医を対象に一週間のハーブ特別クラスを開講したが、これまで 西洋医学一辺倒だった医療関係者も注目している。

エフェドラ、ヨヒンベなど使用の際、注意を要するハーブ

とはいえ、ハーブの中にも危険視されているものもある。以下のハーブは「使用にあた り注意要」といわれている。

◎エフェドラ
空腹感を抑える、極度のぜんそくを静めるなどの効果がある。妊娠中、授乳期、また高 血圧、心臓疾患、糖尿などの問題のある人は使用を避けること。また、抗鬱薬、緑内障 薬などを取っている場合も使用を避けるべき。

◎下剤としてのセンナ、アロエ
腸の働きを活発にする。長期使用は危険。妊婦、授乳期、ヘルニア患者の使用は避け るべき。

◎タンポポの葉
水分排出を促進する。尿道炎に効果が見られる。ただし、長期使用は危険。妊婦、授 乳期の使用も禁止。

◎ゴールデンシール(Golden seal)
バクテリアや菌類への抗生物質として働く。一回の使用期間は最高10日まで。妊婦、 高血圧患者の使用は禁止。

◎ヨヒンベ(Yohimbe)
ある種のインポテンツに効果あり。低・高血圧、糖尿、心臓、肝臓、腎臓疾患のある場合 の使用は禁止。精神分裂などの兆候の見られる人は、精神障害を引き起こす可能性あ り。

◎メグサハッカ
かぜ、流行性感冒、消化障害などに効く。妊婦の使用は禁止。抽出液は毒性が高く危 険。

◎チャパレル(Chaparral)
コレステロール値を適度にする。肝臓疾患のある人、妊婦、授乳期の使用は禁止。

◎コンフリー(Comfrey)
骨の修復、傷の手当てに効果あり。使用期間は一年に4から6週間まで。子供の内服は 危険。妊婦、授乳期も使用禁止。

ところで、最近継続使用で副作用が問題視されたエキナセアであるが、ハーバル・リサ ーチ・ファンデーションのエクゼクティブ・アシスタント、クリスティーン・ミドウさんはこう語る。

「体の免疫力を強化する働きのあるエキナセアは、かぜのひきはじめに効果があり、治癒 を早め、激しい症状を緩和する。だだし予防のために飲むものではありません。長い間飲 み続けると逆に効かなくなります。二日飲んで二日あけるといったように間を空けて服用 すると効果があるといわれています。ただ、何日のインターバルが最も効果的なのかはは っきりとわかっていません。かぜをひくたびに飲んでも、まったく問題はありません」

セント・ジョンズ・ワートやカバカバは供給を上回る需要

ところで、近年、飛ぶ鳥を落とすようなハーブ需要だが、質の高いハーブ獲得に企業も余 念がない。エキナセア、セント・ジョンズ・ワート、カバカバはうなぎ上りの人気とともに値段 も高騰し、栽培者の混乱を引き起こしているほど。人工栽培をしているとはいえ、グローバ ル規模の供給にもっと規制すべきなどの声もあがっており、乱獲を恐れるいくつかの団体 は、監視の目を光らせ、北米原産の野生ハーブの保護に乗り出している。

ハーブ・リサーチ・ファンデーション(注1)は機関紙「ハーバルグラム」の中で、「ハーブ業 界はこのまま成長し続けるだろう。そこで、原料となる植物が足りなくなってくる可能性もあ る。例を挙げると、セント・ジョンズ・ワートやカバカバはすでに需要が供給を上回っている。 特にカバカバは成長するのに3、4年もかかる。非良心的な業者が次々と参入すれば粗 悪品が出回る危険が高くなってくる」と警告している。

注1)ハーブ・リサーチ・ファンデーション

ハーブについて何か知りたければまず真っ先に連絡するといいのが非営利団体の「ハー ブ・リサーチ・ファンデーション」。ハーブに関する研究調査報告、安全性そして効果とい った情報など12万件をこえる豊富な資料を保管しており、一般消費者はもちろん科学者、 教育者、立法者、医療関係者、そして健康食品業界、メディアに対し広くハーブ情報を提 供している。問い合わせは電話800・748・2617(米国内)またhttp://www.herbs.org/ またこの他、米国植物議会(ABC)などもハーブの研究機関として知られる。

米国植物議会(ABC)
ハーブそしてファイト・ケミカルに関する公共教育機関。1988年に非営利の教育機関とし て法人となる。ハーブや植物の啓蒙そして、正しい利用法の推進を目指す。実際の活動 としては、一般、政府、科学機関、メディアなどに正確かつ責任のもてる科学的情報を広 く提供するほか、「ハーブ・リサーチ・ファンデーション」の援助もしている。

また、研究調査報告の批評、各集会の報告、新刊書評などハーブに関する興味深い最新情報を満載し た季刊誌「ハーバルグラム」を発行している。1993年には、ジンセン評価プログラム(GEP) をスタート、市場に出回っているジンセン商品についてそれぞれ質と表示のチャックを行い、 市場の監視役としても活躍。1998年にドイツの学術論文を英語で出版した功績でも高く 評価されている。薬剤師を対象としたハーブおよびファイトケミカルのホームスタディーコー スも評判はいい。

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